趣味の競馬について書いてみます。攻略法や馬券の勧誘ではありません。二冠馬が単勝で極端に厚い菊花賞トライアルで、順位付けと当日材料は「1着側」まで連れてきてくれたのに、相手の消し分けと点数の絞り方で三連単が死んだ——そのログです。ギャンブルを勧める意図はありません。予測が近くても、下流のフィルタと過絞りで再現率が落ちる、という失敗の切り分けとして読んでください。
設定:レースと目的関数
対象は 2026年9月21日・阪神11R 神戸新聞杯(GII)芝外2400m、出走11頭です。菊花賞の優先出走権がかかる3歳戦で、春の二冠馬01ロブチェンが単勝1倍台の中心でした。
目的関数は単勝一点ではありません。「1着候補を守りつつ、2・3着を制約の中で並べる」ことです。セントウルSやオールカマーで繰り返してきた型——上流の並びは悪くないのに、弱い物語で候補を落として券面がゼロになる——を、今回は避けたかった、という前提もあります。
最終的に中心にしたのは次の形です(金額は書きません)。
- 本線:
01 → 07 → 02・10(2点) - 保険:
07を1着にした穴帯(05・06・08・11を相手にしたもの)
つまり「01が勝つ本線」と「07が勝つ低確率側」の二層です。結論から言うと、本線の1着は当たり、2・3着の設計で死にました。
使った材料
材料はおおむね次です。
- 独自に学習した芝中長距離・外回り寄りドメイン(東京+阪神外+京都外、2000〜2400)のランキングモデル。レース内偏差スコアで候補を並べ替えます。当日はモデル単体だと04アルトラムスが上位、01は偏差だけ見ると中位でした。
- 対戦・タイム系の補助スコア(レース内偏差)。01はこちらが厚く、合算(モデル偏差+補助)では01が先頭、07コンジェスタスが続き、10・02・04が中心帯、という並びになっていました。「モデル単体と補助が食い違う本命」をどう残すか、が最初の論点です。
- 調教。外部記事の文字評価では09グリーンエナジーが最上段、01・07はA帯、04はB帯。一方、蓄積している坂路・ウッドの時計を「同じ日・同じコースの場内偏差」にすると、本追いでは04が先頭でした。記事の文字と、時計の相対が一致しない、という信号の食い違いがありました。
- 展開の仮説。前年同レースは淀みから加速し、中団付近から届いた差しが残った、という読み。そこから「届く位置×キレ」の物語を厚くし、追込み寄りの04を相対的に薄く見ていきます。
- 市場。単勝1倍台の01は、正規化した見え方でもおおよそ3分の2前後の1着確率帯。1着固定そのものは合理的、と判断しました。
印としては、合算の中心を崩さない制約のもとで、◎01、○07、▲04、△10、☆02、次点に09、としました。ここまでが「上流」です。
何を残し、何を切ったか
避けたかった失敗には、ある程度は手を打っていました。合算1位の01を枠や阪神初出走だけで切らない。09をダービー大敗の物語だけで消さない。軸を01だけに固定せず、議論の段階では07を二軸の片翼に残す——セントライトやオールカマーでやった型の再発防止です。
壊れたのは、そのあとです。
本線を決める過程で、「キレ」と「届く位置」の物語が強くなりました。上がりのレース内偏差では02や09が厚く、前年型の再現なら07が中団から、01は好位で残る、という絵です。04はモデル偏差1位で印にも入れていたのに、「追込みで届かない」側のラベルが付き、本線の2・3着から外れていきます。
最終の本線は 01-07-02/10 の2点です。1着01は市場とも合算とも整合する。問題は、印の▲04を本線の相手から落とし、2着を07に固定し、3着をキレ上位の02・10に寄せたことです。初期に考えていた、01軸で07・04・10・02を相手に残す形より、かなり細いです。
保険の07頭穴に08シートゥサミットは入っていました。ただし構造が「07が1着のとき」なので、01が勝つ本線とは別世界です。後から見ると、08を拾える券ではなかった、と言えます。
結果
着順は 01 → 04 → 08、ロブチェン→アルトラムス→シートゥサミットです。買った本線・保険の三連単は不的中でした。
| 馬 | 最終での扱い | 着順 |
|---|---|---|
| 01ロブチェン | 本線の1着 | 1着 |
| 04アルトラムス | 印▲・モデル上位・調教時計も厚いが、本線の相手から除外 | 2着 |
| 08シートゥサミット | 合算下位。07頭穴の相手にはいたが、07が勝たないと生きない | 3着 |
| 07コンジェスタス | 本線の2着固定 | 圏外 |
| 02・10 | 本線の3着候補 | 圏外 |
予測の近さと、券面の成否を分けて書く必要があります。1着の01は当たっています。2着の04は、印とモデルと調教時計のどれを見ても「残すべき側」にいました。3着の08は、今回の順位付けでは再現しにくい側です。券面が死んだ主因は08を当てられなかったことではなく、04を本線から落としたことです。
レース後に、人気順位と合算・補助を薄く混ぜた「厳選」の上位3頭を機械的に取り直すと、01・09・04でした。実績の1・2着が両方入っています。つまり順位付けの核は、少なくとも2着までは連れてきていた。当日の券面で死んだのは、その核から04を物語で外したあとの話です。
ポストモーテム
正しかった点から先に書きます。01の1着固定は、市場と合算の厚さを素直に使えた判断でした。阪神初出走をキルスイッチにしなかったのも、過去の振り返りルールどおりです。モデル単体で04が上、補助で01が上、という食い違いを合算で扱う枠組み自体は、1・2着の両方を候補に残す方向を示していました。調教についても、蓄積時計の場内相対は04を支持していました。
間違った点は、意思決定レイヤのフィルタです。「届かなそう」「キレ順位が上の馬を厚く」は仮説としてはあり得ますが、それを 印に入れた馬の本線除外 や 2点への最終絞り にまで引き上げる根拠としては薄かった。セントウルSでやった「弱い物語で3着を切る」の再発に近く、今回は対象が2着候補の▲だった、と言えます。
もう一つの失敗は、過絞りです。1着が固まると、つい相手を物語で美しくしたくなります。美しい2点は、再現率(recall)を捨てた設計です。初期の広い相手帯なら 01-04-? までは視野に入っていました。絞ったあとに残ったのは、当たった1着と、外れた物語の相手だけです。
08については、予測外として切り分けます。「穴を当てる」話に回収すると、学びが濁ります。今回の本題は、読めていた04を落としたこと、です。
一般化できる学び
エンジニアリング側に引き戻すと、三つあります。
ひとつめは、ラベル付きの候補に対する false negative です。印やモデル上位、あるいは別チャネル(調教時計)で既に「残す」とマークした対象を、後段の物語フィルタで落とすと、上流が正しくても成果はゼロになります。レビューでLGTMが付いた変更を、デプロイ直前の感覚でrevertするようなものです。
ふたつめは、チャネルの優先順位 です。外部記事の文字評価Bと、同じ日の場内時計で首位、が食い違うとき、説明しやすい物語(追込み・届かない)に寄せると、定量チャネルを捨てることになります。不一致は「消す」ではなく「残しつつ点数で薄くする」側に倒した方が、制約下でも壊れにくいです。
さいごに、本命が固まったあとの過絞り です。1着の確度が上がると、相手側の探索を止めたくなる。プロダクトでも、主力KPIが安定したあとにエッジケースのテストを削ると、同じ形で事故ります。本線に下限の点数(候補の幅)を設けるのは、感情ではなく制約として先に書いておく価値があります。
おわりに
この記事で伝えたかったのは、勝ち方ではありません。1着は当たった。材料も、2着に来る馬を候補からは外していなかった。それでも券面は、消し分けと絞りで死んだ——その切り分けです。
競馬を始める必要はありません。代わりに、自分が運用している予測や推薦、審査ルールで、「すでに残すと決めた対象」を後段の物語で落としていないか。そちらを点検する材料にしてください。