趣味の競馬について書いてみます。攻略法や馬券の勧誘ではありません。自分で作った順位付けとコース適性のフィルタで点数を絞り、読みの一部は近かったのに、消し分けで券面が死んだ——そのログです。ギャンブルを勧める意図はありません。予測やシナリオが悪くなくても、下流の除外ルール一つで再現率が落ちる、という失敗の切り分けとして読んでください。
設定:レースと狙い
対象は 2026年9月20日・中山11R 産経賞オールカマー(GII)芝2200m、出走13頭です。古馬の中距離重賞で、防衛組と先行型、斤量の軽い牝馬が混ざる一戦でした。
当日の馬場はラベル上は良寄りでも、R7以降が本降りで「重っぽい」感触でした。過去の中山芝1800–2200の重では、逃・先行と4角うち目が残りやすく、追込み待ちは薄い——その統計も見ました。狙いの骨格は「前目が粘り、差しは限定的」です。
目的関数は単勝一点ではなく、候補を絞ったうえで組み合わせを組むことです。最終的に買ったのは次の形です(金額は書きません)。
- 馬連: 09コスモキュランダを軸に、07レガレイラと12エセルフリーダ(2点)。意図は07・09・12の馬連BOXでしたが、購入時に買い方を誤り、07-12が欠けていました
- 三連複: 07-09-12 の1点
- 三連単: 07の1着固定で、2・3着を09と12(2点)
つまり最終券面の核は 中山適性が厚い3頭 に寄っています。ここに至るまでの途中経過が、今回の本題です。
使った材料
材料はおおむね六つです。
- 独自に学習した中山芝中距離向けランキングモデルのレース内偏差スコア。候補の並べ替え装置です。当日は04ヴーレヴーが上位、09も合算・補助スコアとも厚い帯にいました。08メイショウゲキリンは片方のモデルでは高く、補助スコアは薄い、という「片方だけの信号」でした。
- 対戦・タイム系の補助スコア(レース内偏差)。合算の核を見るための合成に使います。
- 馬場と展開。本降り後の重っぽさ、前目残り、4角うち目。過去の重・不良の集計とも整合させていました。
- 中山/阪神内のコース適性。07・09・12は中山の数字が厚く、04・13ジューンテイク・08は中山が未知〜薄い。ここを最終の消し条件に強く使いました。
- 調教・仕上がり。最終追いで13を一段落とし、08も弱い側に見えていました。
- 血統・騎手などの周辺。父産駒の重適性や、出遅れ・鞍上不振といった物語。説明しやすいので、つい優先度を上げがちでした。
何を残し、何を切ったか
印と券面は一日のあいだに何度も動きました。ざっくりした流れだけ書きます。
最初は前残り想定で、09や04、モデル上位の先行候補を厚く見ていました。調教と当日芝を見て、いったん04を本命側、07を差しの限定相手に上げ、13を調教で落としました。そのあと09は出遅れ癖や鞍上の重賞不振で優先度を下げ、「切れない」と言いながらも券面の中心から外す方向に寄せていきます。
最終的に残した判断基準は 中山適性 でした。07(前年同レース勝ち)、09(中山で複勝が多い)、12(中山で勝ちが多い)——コースの数字だけ見れば一貫しています。その代わりに外したのが、08(中山ほぼ未知の逃げ先行)、04(中山初だが重の先行勝ちとモデル上位)、13(中山初・重賞内容が割れる)です。
ここで二つ、自分でも気づいていた矛盾があります。
ひとつは04です。「中山未知だから切れない」と口にしながら、最終の07-09-12からは外しています。減点と除外を混同した、と言ってよいです。
もうひとつは08です。モデルの片方では上位で、重×先行のシナリオとも噛む。それを中山未知と調教の弱さで落としました。説明しやすいフィルタが、再現率を削った形です。
結果
着順は 08 → 01 → 04、メイショウゲキリン→キャントウェイト→ヴーレヴーです。買った馬連・三連複・三連単はすべて不的中でした。
| 馬 | 最終での扱い | 着順 |
|---|---|---|
| 08メイショウゲキリン | 中山未知・調教で切った/印からも外した | 1着 |
| 01キャントウェイト | 印外 | 2着 |
| 04ヴーレヴー | 「切れない」と言いつつ券面から外した | 3着 |
| 07レガレイラ | 軸側・三連単の1着固定 | 圏外 |
| 09コスモキュランダ | 馬連軸・三連の核 | 圏外 |
| 12エセルフリーダ | 相手 | 圏外 |
シナリオの「前目が残る」方向は、08の勝ち方と大きくは矛盾しません。一方で、中山適性で厚くした3頭は馬券内に届きませんでした。読みの一部は近く、券面は死んだレースです。
馬連の買い方ミス(BOX意図が軸流しになっていたこと)は運用上の失敗として残します。ただし今回の着順では、欠けていた07-12があっても馬連は成立しません。主因はそこではありません。
ポストモーテム
正しかった点、または過剰切りではなかった点から書きます。
13を重賞内容と中山初で一段落とした判断は、少なくとも馬券内には来ておらず、今回の主因ではありません。重っぽい・前目、という大きな枠の読みも、08が体現した可能性が高いです。07・09・12を厚くしたロジック自体は、過去のコース数字とは整合していました。外れたのは「正しさ」ではなく、フィルタを単独の最終条件にしすぎたことです。
間違った点は二つに絞れます。
第一に、08の除外です。中山未知は事実ですが、それを最終消しにするには根拠が弱かった。重×先行×モデル上位は、相手まで残すべき帯でした。説明しやすい「コース適性なし」が、拾うべき候補を落とした(false negative)典型です。
第二に、04の最終除外です。巴賞の重、斤量、モデル上位、そして自分でも「切れない」と言っていた。減点して薄く残すのと、券面から消すのは別判断です。3着に来たことで、その混同のコストがはっきりしました。
01の2着は、印の段階から拾えていません。ゴールドシップ産駒で中山経験もある馬を、候補母集団に入れられなかった点は、次の改善枠です。ただし主因の説明は、08と04の二つのFNで足ります。
セントウルSやセントライト記念と同じ系統の失敗です。上流の並べ替えやシナリオがゼロではないのに、下流の除外ルールが再現率を壊す。精度指標だけを見ていると見逃しやすい、運用側のバグです。
一般化できる学び
競馬の話に閉じず、エンジニアリング側に引き戻すと四つあります。
ひとつめは、false negative のコストを見積もれということです。説明しやすいフィルタ(今回なら「中山未知」)を最終除外にすると、上流が正しくても下流でゼロになります。プロダクトでも、再現率を犠牲にしたルール追加が全体KPIを壊すことは珍しくありません。
ふたつめは、減点と除外を分けよということです。「切れない」と認識した候補を、別フィルタの都合で券面から落とすのは、ログ上の自己矛盾です。薄い残し(点数や相手の端)で表現するほうが、制約下でも壊れにくいです。
みっつめは、コース適性はブーストであり、単独のキルスイッチにしないことです。適性は強い信号ですが、他の強い信号(道悪適性・先行・モデル上位)と衝突したときは、消すより薄く残す側に倒す。
よっつめは、事後検証を感情ではなくログとして残すことです。「中山を信じたのが悪かった」でも「モデルがダメだ」でもなく、どの信号を信じ、どの制約で切り、どこでしきい値が誤ったかを文章に残す。次のレースの入力になるのは、そのログだけです。
おわりに
この記事で伝えたかったのは、勝ち方ではありません。中山適性という筋の通ったフィルタを、最終の消し条件にしすぎたこと。切れないと言った馬を券面から外したこと。前目のモデル上位を、未知の二文字で落としたこと。——その三つを、自分の手で再確認した話です。
競馬を始める必要はありません。代わりに、自分が運用している予測やレコメンド、審査ルールのどこで false negative を安く見積もっていないか。コース適性のような「正しく見えるフィルタ」が、単独で recall を削っていないか。——そちらを点検する材料にしてください。